終わらせるのは、いつも自分だった。だから今夜は、終わりの合図を機械に預ける。動いては止まり、止まってはまた動き出す律動に、何度も手前で引き戻される夜。物語のあとに、この夜を再現する手順も載せています。
締め切りを決める男
納品のメールを送り、ノートパソコンを閉じる。フリーランスになって五年、仕事の始まりも終わりも、すべて自分で決めてきた。誰にも急かされない代わりに、誰にも止めてもらえない。
夜の部屋は静かだった。冷めたコーヒーを流しに捨て、伸びをする。肩が鳴る。今週も、自分で決めた締め切りに、自分で追い立てられていた。
仕事を始めたばかりのころは、締め切りを自分で決められることが自由だと思っていた。今は、決め続けることに少し疲れている。終わりを自分で引くたびに、どこかで小さな緊張が切れずに残る。その糸を、今夜は誰かに預けてみたかった。
何かを、自分以外の何かに終わらせてほしい。そんなことを思ったのは、初めてだった。いつ終わるかを知らないまま、ただ待つ。それはどんな感覚なのだろう。
クローゼットの奥から、ひと月前に買った箱を取り出す。説明書に、気になる一行があった。「インターバルモード:動作と停止を、不規則にくり返します」。
終わりを手放す
黒い筒をぬるま湯で温める。内側の柔らかな壁が、指に吸いつくようにまとわりついた。スイッチを入れると、低い駆動音とともに、筒の奥がゆっくりと脈打ち、数秒で止まる。また動き、また止まる。その間隔は、本当に予測できなかった。まるで、こちらの呼吸を測っているようだった。
アプリで最弱のインターバルを選び、スマホを伏せて枕元に置く。手を伸ばせば届く場所。本当に嫌なら、いつでも止めていい。そう決めてから、彼はもう一つ決めた。それ以外の理由では、この画面に触れない。
終わりを、手放す。口の中でそう繰り返すと、妙に心臓が速くなった。毎日あんなに簡単に決めていることを、手放すだけで、こんなに緊張するとは思わなかった。
部屋の明かりを落とし、ベッドサイドの小さなランプだけにする。暗がりの中で、伏せたスマホの縁だけがかすかに光っていた。あれに触れなければ、今夜の終わりは自分のものではなくなる。その事実が、怖いほど甘かった。
たっぷりとローションをまとわせ、ゆっくりと筒を迎え入れる。温かい。止まったままの筒が、体温を少しずつ吸っていく。深呼吸をひとつして、彼は筒を固定し、両手をシーツの上に下ろした。
止められては、また始まる
最初の律動は、拍子抜けするほど穏やかだった。内側の壁がゆっくりと前後し、重なったひだが一枚ずつ通り過ぎていく。心地よさが、波のように少しずつ高くなる。もう少し、と思ったところで、ぴたりと止まった。
静けさが戻る。聞こえるのは、自分の呼吸だけ。高くなりかけた波が、行き場をなくして体の中でゆっくり引いていく。思わず枕元に手が伸びかけて、止める。今夜は、終わりを決めないと約束した。
止まっている間、筒の中の柔らかな壁は、ただ温かく包んでいるだけだ。その静けさが、かえって感覚を研ぎ澄ませる。脈打っているのは、もう機械ではなく、自分の体のほうだった。次の律動を待って、呼吸が浅くなっていく。
何秒たっただろう。忘れかけたころに、筒がまた動き出す。さっきより、ほんの少し速い。引いたはずの波が、前よりも高いところから立ち上がってくる。そしてまた、手前で止まる。今度は、さっきよりも長い静けさだった。
三度目、四度目。止まるたびに、体のほうが先回りして待ってしまう。次はいつ来るのか。どこまで連れていかれるのか。分からないまま待つ時間が、いつの間にか、いちばん甘い時間になっていた。
終わりを待つ夜に、溺れる
時間の感覚が、溶けていく。仕事の段取りも、明日の予定も、もう頭のどこにもない。あるのは、動き出す瞬間と、止まる瞬間だけ。そのくり返しの中で、体の芯がじわじわと熱を溜めていく。
止まるたびに、吐く息が長くなる。動き出すたびに、喉の奥で息が詰まる。そのくり返しが、いつの間にか自分の呼吸のリズムになっていた。機械に合わせて呼吸している。そう気づいても、もう抗う気は起きなかった。
何度目かの静けさのあと、律動が戻ってきた。今度は、止まらなかった。ゆっくりと、けれど確かに、波が今までのどれよりも高く積み上がっていく。シーツを握る指に力がこもる。止めてほしいのか、止めないでほしいのか、もう自分でも分からない。
そして、波は崩れた。何度も引き戻されてきた分だけ、長く、深く。終わりを決めたのは、自分ではなかった。それが、こんなにも満たされることだとは知らなかった。
余韻の中で、ようやく自分の手でスイッチを止める。部屋に、静けさが戻った。筒を外し、ぬるま湯で洗って、タオルの上で乾かす。明日からまた、締め切りを決める毎日が始まる。けれど、終わりを誰かに預ける夜もあっていい。そう思えたことが、少しだけ嬉しかった。
この夜に使ったグッズ
この夜に登場したのは、動きのパターンを選べる電動ホールです。選び方は、ガイドで詳しく紹介しています。
止まっては始まる律動
パターン機能付きの電動オナホール
| どんなグッズ | ピストンや振動などの動きを持ち、動作と停止をくり返すパターンを、本体のボタンやアプリで選べるタイプ |
|---|---|
| 選ぶときに見る点 | パターンの種類、最弱がしっかり弱いか、スリーブを外して丸洗いできるか、動作音が控えめか |
この夜の再現手順
- 準備を手元に揃える:本体を充電し、水溶性ローションとタオルを用意します。照明を落とすと、律動に意識を向けやすくなります。
- スリーブを温める:取扱説明書に沿って、ぬるま湯や加温機能で人肌程度に温めます。
- 止まった状態で装着する:ローションをたっぷり使い、電源を入れる前にゆっくり迎え入れて、違和感がないかを確かめます。
- 最弱のパターンから任せる:動作と停止をくり返すパターンを最弱で選び、慣れてから一段階ずつ上げます。スマホやリモコンは、すぐ止められる場所に置きます。
- 時間を区切る:同じ場所への摩擦が続くとひりつきの原因になります。20〜30分を目安に、いったん休ませます。
安全に溺れるために
- 痛み、ひりつき、しびれを感じたら、すぐに中止してください。症状が続く場合は医療機関へ。
- ローションが乾いてきたら、ためらわず足します。
- 「止めない」と決めるのは気持ちの上だけにして、止めるための操作は、いつでもできるようにしておきます。
- 使用後はスリーブを外してぬるま湯で洗い、内側まで完全に乾かしてから保管します。
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